発売中の『群像』2012年5月号に連載「〈世界史〉の哲学」第38回が掲載されています。
第38回「カーストの基底としての贈与」
中国には、中央集権的な支配を有する大規模な社会構造が成立した。そのような社会構造が帝国である。それに対して、インドの社会構造は多元的に分解されていて、権力は限定的な範囲にしか及ばなかった。そのインドの社会構造に与えられている名前が、カースト体制である。中国に最初に帝国と呼びうる統一的な社会を実現したのが秦であったことを思うと、両者の差異の源流は、二千年を超える過去にまで遡った地点にあることになるが、前回の最後に述べたように、この差異は、二一世紀の現在でも効いている。政治や経済の領域で、現在中国で起きていることとインドで起きていることの間の主要な違いは、こうした歴史的な差異からダイレクトに説明することができるのだ。とするならば、当然、提起されるのは、こうした執拗な差異はどこから生じたのか、という疑問である。何が原因で、ここまでの持続する差異が形成されたのだろうか。
1 マルクス主義的な図式の格好の素材?
2 カースト制度の基底に
3 負債としての人間存在
4 儀礼的贈与交換のふしぎ
目次など詳細は下記の「群像」HPをご覧ください。
http://gunzo.kodansha.co.jp/