創刊の辞

われわれはどこに行くのか、どこに行きうるのか。これらのことを知り、また構想するためには、われわれがどこにいるのか、どこから来たのかをも知らなくてはならない。

創刊の辞

われわれはどこに行くのか、どこに行きうるのか。これらのことを知り、また構想するためには、われわれがどこにいるのか、どこから来たのかをも知らなくてはならない。未来への構想力を解放するために、現代社会を、〈現在〉を、アクチュアリティと理論的深度の両方を兼ね備えたかたちで考察すること、これが月刊誌『O』のねらいである。

このねらいを実現するために『O』が選んだのは、対話という方法である。毎回、現代社会を考える上で鍵となる主題を選び、その主題に深くかかわってきた方と大澤真幸が対談する。最も初期の哲学書、すなわち古代ギリシャの哲学書がしばしば対話篇であるという事実がよく示しているように、対話こそが思考の原型だからである。対話は、ダイナミックな思考の過程を、そのまま読者に届けるだろう。かくして、対話は、大澤を媒介者とすることで、出来事の現場と読者との間に〈ランダムな線〉を—連帯の絆を—引くことになるだろう。

加えて、『O』は、毎回、媒介者としての大澤が、その対話から触発されたことを、論文としてまとめる。理論的深度を確保するためには、対話によって活性化された思考が鮮度を失わないうちに、それを反省的にとらえかえすことが必要だからだ。

「O」は、数字の〇をも意味している。これは、〇からの、原点からの思考たらんとする書である。(O)