【新刊】むずかしい天皇制【共著】

憲法学者・木村草太さんとの対談による共著が刊行されます。なぜ他のものは捨てられても、天皇制だけは捨てられないのか。謎の根幹に挑む。

天皇とは何か。天皇制は何のために存在しているのか。天皇の家系は、どうして他の家系と比べて特別に高貴なのか。こうしたことを誰にも納得できるように説明することは、とてもむずかしい。だがいかにむずかしいとしても、天皇制こそが、日本人である「われわれ」は何者なのか、を理解する上での鍵なのだ。
天皇制の過去、現在を論じることを通じて、日本人とは何か、日本社会の特徴はどこにあるのかを探究する刺激的対談。社会学者と憲法学者が、誰もが答えられない天皇制の謎に挑戦する。

天皇制を理解することは、日本社会の中のひとつの政治制度や特殊な文化様式を理解すること(に尽きるもの)ではない。天皇制を見ることは、結局、日本人と日本社会の歴史的な全体を見ることに直結している。──大澤真幸
天皇制は、天皇・皇族にとっても、日本社会にとっても犠牲が大きく、他方で、それが果たしている法的役割も国民の関心も低い。この制度が存在すること自体が最大の不思議だと言わざるを得ない。──木村草太

【目次】
まえがき 大澤真幸

第1章 現代における天皇制の諸問題──象徴、人権、正統性
 天皇制とはどんなゲームか/普遍的価値を考える唯一の手がかり/「天皇制に反対」がデフォルトだった時代/
 何を象徴しているのか?/事実命題か、当為命題か/「象徴」は積極的な選択だった?/
 二つの矛盾したベクトルの共存/積極的機能と消極的機能/天皇の持つ正当化機能とは何なのか/
 どこまで象徴的行為を認めるか/ノモス(規範)を実現するゲーム/失敗を補償する装置/
 敗戦問題で果たした積極的機能/法的な定義における天皇/人間が感じる正統性の源は何か?/
 天皇と歴史修正主義の関係/死者の思いや願いを継承すること/昭和天皇の人間宣言をめぐって/
 皇室メンバーの人権問題/持続可能性の危機/本気で考えられていない持続可能性/
 なんのために、どうして必要なのか/日本人にある最小限の合意の印

第2章 歴史としての天皇制──上世、中世、近世まで
 天皇制を歴史的に振り返る/「天皇断絶説」と「天皇連続説」の対立/邪馬台国の時代/
 「第三者の審級」とシャーマン/実在した最初の天皇はどこからか/天皇の呼称はいつから始まったか/
 「天子」でもなく「王」でもなく/中国式皇帝理論との違い/半島と島国の危機感の差/
 天皇は自前の軍隊を持たない/所有と占有の中間で成り立つ荘園/「税を払わない!」と言った奴はいない/
 現場の意向が強い日本/摂関政治の危うさ/「とりあえずビール」「とりあえず天皇」/
 武士はどこから出てきたのか/土着と貴族の二重性を持つ武士/仕えつつ自律しているという二重性/
 日本で戦闘者の威信が高いのはなぜか/天皇への敬意がゼロだった信長/武士は滅びて天皇は残る/
 目的や主題がない応仁の乱/中央にいて地方も治めるのは不可能/天皇の権力がきかない戦国時代/
 日本の雇用システムの源流は天皇に/天皇を蔑ろにする者は排除される/信長、秀吉、家康の3ステップ/
 天皇の存在感が希薄な江戸時代/神話的な権威が効いていない/調整問題解決装置としての天皇/
 客観的に見れば不可思議なゲーム/幕末・明治維新へ

第3章 近代の天皇制──明治維新から敗戦まで
 江戸幕府末期の天皇制/新しい「われわれ」の必要性/私(わたくし)と公(おおやけ)/
 徳川には正統性が不足していた/黒船に対して幕府は自信がなかった/天皇と武士との不思議な相互依存/
 プラグマティックな関係/武士たちの自己否定/議会と天皇の関係性/
 「自然的身体/政治的身体」の二重性/機能がないから侵すまでもない/天皇制における「アイロニカルな没入」/
 標準型から外れている日本のナショナリズム/明治維新の逆説/大日本帝国憲法と皇室典範/
 憲法の運用、四つの時代/重要なエージェント、元老/憲法制定まで時間がかかった理由/
 超然としている方が偉い/文官に軍人をコントロールした経験がない/美濃部達吉の天皇機関説事件/
 天皇制の顕教・密教/日本社会の隠された身分制度

第4章 戦後の天皇制──憲法、戦後処理、民主主義
 ポツダム宣言前後の情勢/「無条件」以上に降伏した日本/天皇の戦争責任の扱い/
 マッカーサーの誇張/日本国憲法の成立過程/突貫工事で作られた憲法/「押し付け憲法」論について/
 GHQ案の与えた衝撃/「八月革命説」の妥当性/大半の日本人にとってはどちらでもいいもの/
 善意の圧政者/憲法制定権力論/革命か、連続性か/日本国憲法成立の七つのフェーズ/
 天皇人間宣言の評価/国体護持という空虚な論点/平和主義でも民主主義でもなく/
 天皇制の文化財的な価値/天皇はリザーブか、レギュラーか/民主主義についての議論が薄い/
 同一性の民主主義/天皇がいる以上、日本に空気は存在する/天皇の意思と空気は自動的に一致する/
 代表のように見えて、何も代表していない/天皇のために9条は用意された?/思想や理念を測るリトマス試験紙

あとがき 木村草太
参考文献

晶文社HP(https://www.shobunsha.co.jp/?p=6539)もご覧ください。