愛の斥力

われわれは次のように考えるべきではないか。愛は、引力だけでなく、斥力をも含意しているのだ、と。(中村哲氏の)息子への愛は、むろん、息子の呼びかけに応じ、息子のもとに駆けつける力として作用する。だが息子への愛が、ときに、息子から去ることを、息子を犠牲にすることをも要請することがあるのではないか。息子への愛のこのような斥力としてのアスペクトが、アフガニスタンへの(引力としての)愛へと変形するのではないか。『THINKING「O」』創刊号より