日経新聞書評:『〈世界史〉の哲学 古代篇・中世篇』

日本経済新聞11月6日付の読書面で、文芸評論家の井口時男氏が『〈世界史〉の哲学』を取り上げています。

「「西洋」の形成過程を明晰に論述」

 壮大なテーマだ。狙いはしかし、「近代」とは何か、という一点である。「近代」を問うことは「西洋」を問うことである。それが、本書のタイトルが〈世界史〉と表記されている理由だ。「西洋」という特殊な地域で開始された「近代」が世界中を覆った。特殊なものがなぜ普遍化したのか。
 「西洋」の精神的根幹にはキリスト教がある。資本主義も同じだ。マックス・ヴェーバーが示したように、資本主義も、「西洋」において、キリスト教(プロテスタンティズム)の倫理の経済活動上の実践として始まった。ここでも特殊なものが普遍化したのだ。
 だから、問いはまず、キリスト教とは何か、に絞られる。キリスト教の中心にはイエス・キリストがいる。では、イエス・キリストとは何者か。「古代篇」は挙げてこの問題を追究する。
 本書はあくまで〈世界史〉の「哲学」である。つまり、歴史上のイエス・キリストの実像が問題ではない。むしろ著者は、福音書の記述を総体として受け入れたうえで、イエス・キリストの認識と論理を、イエスが言葉で述べた認識と論理だけでなく、いわばイエスがその存在そのものによって示した認識と論理の特異性を、明らかにしようとする。

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