『夢よりも深い覚醒へ——3.11後の哲学』(岩波新書)

『夢よりも深い覚醒へ——3.11後の哲学』(岩波新書)が刊行されました。


本書は「3.11」を考えるための特別の新刊の1冊です。

目次
序「夢よりも深い覚醒へ」
1 夢よりも深い覚醒へ
   子を失った父親が見た夢/夢から現実への逃避/語ることで隠蔽する?
2 いきなり結論
   段階的な脱原発/代替的な電源/原発と経済/原発と温暖化
3 反言語としての詩のように
4 不可能な選択
   暴走列車の問題/不可能な選択

I「倫理の不安—9・11と3・11の教訓」
1 二つの「11日」
   9・11と3・11/9・11における二種類の悲劇/3・11における二種類の悲劇
2 理不尽な絶滅
   進化論を参照する/絶滅のシナリオ/理不尽な絶滅
3 道徳的な運
   進化論にとってのスキャンダル/道徳的な運/倫理の基礎に
4 リスク社会におけるリスク
   リスクの二つの性質/「第三者の審級」の撤退/科学における通説の消滅
5 倫理の本源的な虚構性
   免罪はされない/定言命法/倫理の虚構性
6 報われぬ行為
   憂鬱な結論/終わらない戦争/信と知の乖離

II「原子力という神」
1 1995年の反復としての2011年
2 人間の崇高性と不気味さ
   人間の崇高性と友愛のコミューン/ショック・ドクトリン/不気味なテクノロジー/オウムとカントとハイデガー
3 原子力という神
   ユートピアへの鍵/「ウラン爺」と呼ばれた男/理想の時代の理想性/核の恐怖と核の魅力/プルトニウムに群がる人々——アメリカ
4 原子力へのアイロニカルな没入
   70年代の転換/原子力の二元体制/原子力へのアイロニカルな没入
5 核には反対だが賛成だ
   9条と原発/「pである、ただしq」
6 ノアの大洪水

III「未来の他者はどこにいる? ここに! 」
1 偽ソフィーの選択
   神義論から人義論へ/脱原発派の意外な少なさ/人間の欲望の一般的な問題として…/偽ソフィーの選択/論点の補足
2 正義論の無力
   無知のヴェール/正義論における原発問題/環境リスク論/「生物種の絶滅」というエンドポイント/貯蓄原理/過去からの借り/未来への貸し
3 灰を被った預言者
   ヨーロッパの反応/終末論の形式/灰を被ったノア
4 未来の他者は〈ここ〉にいる
   カントによる一つの「不可解な謎」/トカゲは貧しい世界をもつ/必然的にして偶有的/過去の憂鬱/フェリーニの『サテリコン』/1848年のプロレタリア革命/未来の他者はどこにいるのか

IV「神の国はあなたたちの中に」
1 神の国はどこにある—いまだ/すでに
   「神の国はあなたたちの中にある」/洗礼者ヨハネとイエス/革命家イエス・キリスト
2 究極のノンアルコール・ビール
   虚構の時代の原子力/○○抜きの○○/原子力の平和利用
3 江夏豊のあの「一球」
   軽率な導入/江夏豊の19球目/「一球」に対するさまざまな解釈/原発と原爆の等価性に直面して
4 苦難の神義論と禍の預言
   神の国の原発事故/苦難の神義論/禍の預言
5 メシアはすでにやって来た
   ヨブの苦難/神の自慢話/神義論の転回/ヨブの後継としてのイエス・キリスト/先に約束が果たされる/最も恐ろしい啓示/人間が神を救う

V「階級(クラセ)の召命(クレーシス)」
1 階級の由来
   「階級」という主題/クレーシス(召命)からクラセ(階級)へ
2 革命しないプロレタリアート—問題設定
   原発労働者の搾取/格差社会/労働者階級はなぜ政治的に不活性なのか/ソクラテスの産婆術
3 階級とは何か
   階級と階層/階級概念の現代的展開/「階級」概念に関する疑問/「サブクラーク」という奇妙な階級
4 ヘーゲル的主体としての資本
   剰余価値/「傾向的体小化の法則」/実体としてのみならず主体として/観念論的倒錯は実際に生ずる/マルクスはどうして…
5 発話内容と発話行為
   ヘーゲルの再観念論化/言語行為論の教訓/コミットメントはどこで生じていたのか?
6 社会運動の指導者
   無意識の構成/権威あるテスクトの逆説/愛の告白のように…/無知な教師/神の不信仰/「革命における党の役割」という悪評高き主題
7 プロレタリアートのラディカルな普遍化
   プロレタリアートの社会的な普遍化/前未来の第三者の審級

結「特異な社会契約」
1 本論の回顧
2 社会契約の特異な方法
   合理的討議の盲点/垂直的な関係を基底においた集合的意思決定/ラカンの「通り道」/第三者の審級の機能停止

あとがき

岩波書店HP「編集部からのメッセージ」
http://www.iwanami.co.jp/topics/index_i.html