雑誌「NARASIA Q」で橋爪大三郎さんと対談

奈良県の発行する雑誌「NARASIA, Q」第6号の、特集「アジアのスゴ本116冊」で橋爪大三郎さんと対談しました。

テーマは「書物に見えるアジアとヨーロッパ」。

橋爪 (・・・)日本の場合、はじまりにあるのは歌です。歌は、無文字の時代からあった、定型の表現形式だった。歌の中でも万葉の長歌のような、無文字時代の長大な表現形式はたちまちすたれて、短歌だけが残る。なぜかと言えば、結婚前の若い女性に歌を詠むカルチャーがあったからです。男性も歌を詠めないと女性たちからふり向いてもらえないということで、盛んになった。そうした状況で、手本になるよい歌をまとめた本があると便利だとして、『古今和歌集』などが編集されていく。
大澤 日本の本について興味深いのは、本に編まれたからといって、そのテキストに権威がつくわけではない点です。『古今和歌集』に自分の歌が掲載されたら、もちろん嬉しいでしょう。でも一方で「だからどうしたの?」という感覚もある。(・・・)
橋爪 (・・・)もう少し踏み込んで言えば、日本では、仏典や儒教の正典など、便宜的な本ではないちゃんとした本の原典はみんな外国にあって、そのソースにたどり着くことができない。日本にある本はどこまでも「原典」にはなれなくて、せいぜいその「媒介」にすぎない。だから本に権威がないのかもしれない。
(・・・)

対談で言及したのは、『悪魔の詩』、『物騒なフィクション』『コーラン』『論語』『古今和歌集』『薔薇の名前』・・・。ほかにアジアとヨーロッパの違いを知るための10冊として、白川静『漢字 生い立ちとその背景』、本居宣長『直毘霊』、デリダ『エクリチュールと差異』、井筒俊彦『意識本質』などを紹介しています。

奈良県庁などのほか、一部の書店で配布されています。下記の奈良県HPなどでご確認ください。
http://www.pref.nara.jp/item/93799.htm