【対談掲載】松浦寿輝さんとの対談「「近世」への三つの球」が「群像」に掲載されています

発売中の「群像」2017年5月号に、『〈世界史〉の哲学 近世篇』(講談社)をめぐって、作家でフランス文学者の松浦寿輝さんと行った対談「「近世」への三つの球」が掲載されています。

松浦 大澤さんのこの野心作を読みながら、ちょっと類書はないなと思ったんですけど、一つ記憶の中から浮かび上がってきたのは、中井久夫さんが四十代初めに書いた『西洋精神医学背景史』です。これは小さな著作で、まあ大澤さんのと規模は全然違うし、扱っているのも西洋世界だけ、それも精神医学の発達史の「背景」をなす問題に限られている。しかし規模は小さいながらも叙述の密度はものすごく濃い本で、歴史の専門家でも何でもない一人のアマチュアが、一種暴力的な思弁力によって古代から現代に至る世界史の全体を考え抜き、その主要ベクトルを取り出そうとした、その異常な迫力という点で、大澤さんの本とちょっと似たような精神の働きぐあいを感じました。

(中略)

大澤 その科学においてこそ、今話題にしている、経験性と超越性の接続ということが最も劇的に出てきます。科学は、中世までの「テクスト解釈による論証」を「経験による論証」という形式に置き換えたと言われていますが、それは単純すぎる。(中略)そこで、超越的な真理と接続する特別な経験というものが必要になる。それこそが、「実験」なのです。実験というとても乾いた営みにおいて、超越性と経験性が交流する。考えてみれば、これは「牛乳を注ぐ女」と同じなんです。

「群像」2017年5月号には、「〈世界史〉の哲学 近代篇7」も掲載されています。