コミュニケーションはいかにして可能か?
コミュニケーションについて問うことは、人間とは何か、について考えることである。
コミュニケーションはいかにして可能かという問いに切り込む「沈黙の双子」、認知科学や人工知能におけるフレーム問題という難問に挑む「ロボットのジレンマ」、思弁的実在論の検討、さらには脳科学、精神分析における無意識、心理学や精神医学と社会学との接点に浮かび上がる諸問題を鮮やかに考察し、多彩な視点からコミュニケーションの本質に迫る。
コミュニケーションは奇蹟である。われわれは常に、他者たちとコミュケーションをとっている。だがどうしてそんなことができるのか。いかにしてコミュケーションは可能なのか。コミュニケーションが現に生起しているということは、大きな神秘、その謎が解ければほかのすべてのふしぎは消え去るのではないかと思えるほどに大きな神秘である。まずは、コミュニケーションの神秘がまさに神秘である所以を理解しておく必要がある。コミュニケーションはどのような意味で奇蹟なのか。
世界とは結局のところ、他ならぬこの私にとっての世界である。誰にとっても、世界は、〈私〉の認識と相関してたち現れており、それ以外に世界は存在しない。「〈私〉にとっての」という条件から独立した世界そのものは、誰に対しても現れず、存在しないはずだ。(本書「まえがき」より)
目次
まえがき
第Ⅰ部 基礎理論
第1章 コミュニケーションの(不)可能性の条件──沈黙の双子をめぐって
1.社会学の主題としてのコミュニケーション
2.沈黙の双子
3.関連性理論──フレーム問題の魔術的解決?
4.嫉妬と抑制
5.他者の欲望
6.言語行為の構造
7.沈黙の構成
8.電話と郵便と魔法
9.アメリカと子どもと放火
10.内在と超越
第2章 フレーム問題再考──知性の条件とロボットのジレンマ
1.間抜けなロボットたち
2.解決への試み
3.表象主義の陥穽
4.無視すること
5.サーカムスクリプション
6.集合論的類比
7.他者の潜在性
深層学習(ディープラーニング)はフレーム問題を克服できるか?
1.第三次AIブーム
2.深層学習
3.それはまったく解決されていない
4.記号接地問題
第3章 根源的構成主義から思弁的実在論へ……そしてまた戻る
1.社会学理論の到達点――根源的構成主義
2.相関主義を超えて
3.二重の偶有性
4.理論と哲学
第Ⅱ部 応用
第4章 交換にともなう権力・交換を支える権力
1.交換理論の基本着想
2.権力とは何か
3.所有とは何か
4.富=権力説
5.交換に伴う権力
6.交換を支える権力
7.二つの権力
交換理論について
第5章 脳科学の社会的含意
1.内部と外部の界面
2.〈社会〉としての脳
3.三層の自己
4.だます情動
第6章 精神分析の誕生と変容──二〇世紀認識革命の中で
1.エディプス神話の改訂版?
2.相対性理論と探偵
3.死んだ父
4.量子力学と「もう一人のモーセ」
5.死の欲動
第7章 女はいかにして主体化するのか──河合隼雄の『昔話と日本人の心』をもとに
1.「その部屋」を見てはなら
2.宮廷愛との比較
3.異類としての女
4.女の憂鬱/笑いの誘発
5.穴底の三位一体
あとがき
目次詳細は弘文堂HP(http://www.koubundou.co.jp/book/b433131.html)をご覧ください。