『〈世界史〉の哲学1 古代篇』講談社文芸文庫版

現在刊行中の「〈世界史〉の哲学」の最初の巻の文庫版が刊行されています

 シリーズの最初の巻「古代篇」では、〈世界史〉の中のミステリー中のミステリー、イエス・ キリストの殺害が、中心的な主題となる。もし、〈世界史〉の中で、われわれの現在に最も大きな影響を残した、たった一つの出来事を選ぶことが求められれば、誰もが、迷うことなく、イエス・キリストの十字架上の死を挙げることになるだろう。
 どうして、イエス・キリストは殺されたのか? どうして、たった一人の男の死が、これほどまでに深く、広い帰結をもたらすことになったのか? われわれの現在を、社会学的な基礎において捉えるならば、それは「近代社会」として規定されることになる。近代化とは、細部を削ぎ落として言ってしまえば、西洋出自の概念や制度がグローバル・スタンダードになった時代である。その「西洋」の文明的なアイデンティティは、キリスト教にこそある。とすれば、キリストの死の残響は、二千年後の現在でも、まったく衰えることなく届いていることになる。キリストの死は、どうして、これほどの衝撃力をもったのだろうか?
 イエス・キリストは、わけのわからない罪状によって処刑された。その死は、今日のわれわれのあり方を深く規定している。必ずしもクリスチャンではないものも含めて、その死の影響の下にある。どうしてこんなことになったのか?……
(「まえがき」より)

【目次】
まえがき
第1章 普遍性をめぐる問い
第2章 神=人の殺害
第3章 救済としての苦難
第4章 人の子は来たれり
第5章 悪魔としてのキリスト
第6章 ともにいて苦悩する神
第7章 これは悲劇か、喜劇か
第8章 もうひとつの刑死
第9章 民主主義の挫折と哲学の始まり
第10章 観の宗教
第11章 闘いとしての神
第12章 予言からパレーシアへ
第13章 調和の生と獣のごとき生
第14章 ホモ・サケルの二つの形象
文庫版あとがき

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