『〈世界史〉の哲学2 中世篇』講談社文芸文庫版

現在刊行中の「〈世界史〉の哲学」の最初の巻の文庫版が刊行されています

 近代化は、煎じ詰めれば、西洋化の過程だった。西洋に生まれた制度や文化やアイデアがそのローカリティを払拭し、グローバル・スタンダードになる過程が、近代化であった。ところで、その「西洋」とは何であろうか? いつ西洋ができあがったのだろうか? どうして、西洋だけが、そのような特権的な文明となったのだろうか?
……西洋が形成されたのは、「中世」と呼ばれる期間である。だから、本来の意味での中世は、西洋にしかない.そう断じて過言ではあるまい。本書の主題は、まさにその中世、西洋が形成された時代である。
……われわれは、本書で、中世が、キリストの死なない死体に取り憑かれた時代であったことを示すだろう。中世という時代を探究していると、われわれは、SFやホラー映画で何度となく繰り返されてきた紋切型のシーンを連想せざるをえなくなる。主人公が、宇宙人や怪物と闘い、彼らの身体を徹底的に破壊し、ついには「人間」的な原型をまったくとどめないまでにしてしまう。怪物たちの身体は、小さな断片やスライム状の物体にまでなっている。主人公は、怪物たちを殺害したと思って安心して背を向けるのだが、その途端に、断片化したり、粘液化したりした怪物の身体が再び動き出し、集合して、もともとの「人間」のような姿を取り戻す……。中世におけるキリストの身体──とその代理物──は、この種の身体を思わせる。(「まえがき」より)

【目次】
まえがき
第1章 フィリオクエをめぐる対立
第2章 信仰の内に孕まれる懐疑
第3章 二本の剣
第4章 謝肉祭と四旬節の喧嘩
第5章 罪から愛へ
第6章 聖霊と都市共同体
第7章 〈死の舞踏〉を誘発する個体
第8章 聖餐のカニバリズム
第9章 教会を出産する傷口
第10章 空虚な玉座に向かう宮廷愛的情熱
第11章 利子という謎
第12章 「物自体」としての聖地
文庫版あとがき
解説[熊野純彦]

詳細は講談社HP:https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000368404をご確認ください。