「群像」2010年12月号に『量子の社会哲学』書評掲載(評:北田暁大)

「群像」の2010年12月号に、『量子の社会哲学』の社会学者・北田暁大氏による書評が掲載されています。

書評は「「観察(者)」の考古学」と題されています。

    本書を一読して、私は同著者によって比較的初期に書かれた『資本主義のパラドックス』という本を思い出していた。近代資本主義が主題なのだが、そこに様々な文化事象がおり挟まれ、精緻に作り上げられた大澤自身の第三者の審級論により、美しいとでも表現すべき理論的整合性が与えられる。学部生の頃、「社会学とはかくも楽しい、美しい」と思い、本のなかに出てくる文化事象を必死に後追いし受容していった記憶がある。大澤真幸の著作のなかでは、本書『量子の社会哲学』はその『資本主義のパラドックス』に近いタイプのものだ。「今まで何冊かの本を書いてきたが、本書ほど、自由な気持ちで書いたものはなかった」という大澤自身の述懐は、彼の著作を読み続けてきた一読者としても理解できる。さらに本書は連載がベースということもあり、いわゆる論文集ではなく、小気味よいテンポで一定の流れを形成しながら展開されており、読む者をぐいぐい惹きつけていく。読者は推理小説の謎解きをしていくような知的興奮を味わうことができるだろう。

掲載誌『群像』2010年12月号には、「〈世界史〉の哲学」第22回が掲載されています。