発売中の「群像」2012年1月号に連載「〈世界史〉の哲学」の第34回が掲載されています。
「救済のための大きな乗り物」
(略)
2 ブッダの骨
大乗仏教は、このように、初期の仏教が抱えていた構造的な弱点に対する仏教徒自身の自覚の中から生まれた。だが、これはシッダルタに始まる原始仏教を否定したり、転回したりしたものではない。むしろ、原始仏教の精神を継承し、徹底させるものだったと、考えるべきであろう。シッダルタ等の目的もまた、衆生の救済にあったはずだからである。改革がそれ自体、最初期の精神の純化であるという点では、大乗仏教の登場は、たとえばヨーロッパの宗教改革等とも共通している。
だが、それにしても、出家者の共同体をあまり頼りとはせず、また権力者や富者から寄進された荘園などももたなかったとすれば、民衆は、いったいどうやって、大規模な仏教の改革をなしえたのだろうか? 大乗仏教と呼ばれることになる、仏教の新しい流れを形成するほどの英知を——しかも特定の共同体をもたない在家の民衆の中から——いったいどうやって結集させえたのか?
(略)
1 大きな乗り物
2 ブッダの骨
3 例外の普遍化
目次など詳細は講談社HPからご覧ください。
http://gunzo.kodansha.co.jp/10050/10172.html