【新刊】キリスト教と近代の迷宮

原罪が生みだした近代科学、キリスト教と資本主義の本当の関係、和魂洋才という嘘、日本人が敗戦を直視できないわけ、北朝鮮への対処法。歴史と思想の照応が生みだす真の洞察が、日本社会の歪な近代化への処方箋を示す。

現代思想の突端をひた走る社会学の鬼才と物理学出身の異色のキリスト教哲学者が挑む近代の謎。
近代社会や科学の成立とキリスト教の複雑な関係を読み解き、
安倍政治や北朝鮮など、いままさに直面する問題の根底にある日本の歪な近代化への処方箋を提言。

実は、この章[第2章]の対談では、私と稲垣氏の見解がかなり異なっていることが示される。というか、本書は全体として、文字通り対談、対論であって、二人の意見の一致よりも、両者の間の差異や対立の方を多く提示している。私たちは、差異や対立を大いに楽しんだ。読者も、私たちの間の隔たりにおもしろさを感じるに違いない。そして、稲垣氏と私の対立がもっとも顕著なのが、この第2章である。複雑系やカオスの理論をどう評価し、それが科学のパラダイムに対してどのようなインパクトをもちうるのか。脳のような物質と心や社会との間の関係をどのような構図の中で理解すべきなのか。科学の中では排除されている「目的」という現象をどのように位置づけるべきか。こうした論点のすべてにおいて、稲垣氏と私は鋭く対立している。(まえがきより)

もくじ
まえがき(大澤真幸)
第1章 キリスト教と近代の迷宮
      アメリカ大統領選から見えてくるもの
      アメリカのプロテスタンティズムの根源
      アメリカ社会は底が抜けている
      カルヴィニズムの貢献
      ルターとカルヴァン
      一神教の神
      カルヴァン派の真の特徴は?
      カルヴァン派のイメージはどこから来たか?
      現実の政治に関わるということ
      恵みとは何か
      アメリカ人の確信
      神殿としてのイエス
      ただの人、ムハンマド
      イエスは神である
      キリスト教の信仰戦略
      宗教改革と抵抗権
      『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』への疑問
      世俗内禁欲の本質
      フランスにおける近代のルーツ
      カルヴィニズムとピューリタニズム
      日本におけるウェーバーの受容
      ヨーロッパはなぜ特別なのか
      キリスト教と科学
      原罪の学問
      科学の歴史のアイロニー
      謙虚と傲慢

第2章 近代科学の魔力と哲学の逆襲
      複雑系と目的因
      複雑系の意味
      近代科学とは何か
      人間原理は目的論を正当化するか
      実在論と反実在論
      科学の権利
      心脳問題のアポリア
      社会的事実の存在論
      「私と汝」
      近代へのステップ
      第三者の審級と神
      規範と法則
      科学に目的は必要ないか?
      人間の信頼は神の像を描く?
      動物の逸脱
      人間らしさと美

第三部 近代の呪縛と現代日本の責任
      日本のナショナリズムと靖国神社
      天皇イデオロギーとありえた日本
      天地公共の実理
      カントはなぜ現代でも意味があるのか
      イチローはいかに野球を変えたか
      日本の政治が機能しない理由
      沖縄問題の解決に向けて
      立ちすくむ韓国との関係
      怒る中国・韓国と怒らないアメリカ
      謝罪のむずかしさ
      不可能なことは可能になるか?
      日本の政治的コンテクスト
      対米従属の限界
      虐げられる若者たち
      日本はナショナリズムが不足している
      徴兵制の不可避性について
      軍隊なしに平和をめざす
      北朝鮮を民主化する方法
      日本の贖罪と韓国の責任
      セカイ系の政治学
      移民を受け入れる覚悟
      農協が示す別の社会のかたち
      閉鎖社会をひらくには
      第三セクターの役割
      世界の片隅と世界をつなぐ
      ランダムな線
      時を超えた責任
      過去への謝罪

あとがき(稲垣久和)

稲垣久和
1947年、東京都生まれ。東京都立大学大学院物理学研究科博士課程修了。理学博士。トリエステの国際理論物理学研究所、ジュネーブの欧州共同原子核研究所研究員、国際基督教大学講師を経て、哲学に転向、アムステルダム自由大学哲学部・神学部の客員研究員として宗教哲学を学ぶ。東京基督教大学大学院教授。賀川豊彦シンポジウム実行委員。専門は、公共哲学・キリスト教哲学。

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