10月31日「日経新聞」書評『量子の社会哲学』(評:金森修)

10月31日付の「日経新聞」書評欄に、哲学・科学思想史の専門家・金森修氏による『量子の社会哲学』評が掲載されています。

(略)一見、普通の科学社会学に帰属する議論のようだが、より大胆で、より拡散的だ。古典的な科学社会学は科学と同時代の宗教や経済状況との連結を試みることが多いが、本書の場合、つなぎと類比はより複雑で多層的なのだ。例えば或る切り口を通して量子力学と無調音楽やキュビスムをつなぐというように。さらには、例えば政治的例外状況と、量子力学での波動の意味を対応的に捉えた人など、かつていただろうか。(中略)
 社会学の強みは、自分の議論の空間をあらかじめ閉鎖したものとは捉えなくてもいいということにあるらしい。大澤はその特性を十全に生かし、ただし同時にかなり危険な賭に出ている。それは、物理学史という、本来専門的、その意味で内部者のみに関連する話題をより広く一般的な関心領域に解放するという意味をもつ。分散状態にあり、無関係にみえる知が或る視点を設定されるおかげで共振し始め、隠れていた構造類同性を開示するとき、一瞬、祝祭的な雰囲気が立ち上がる。

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