「京都アカデメイア」書評:『O』第8号

京都大学の学生有志を中心とするサークル「京都アカデメイア」のHPに『THINKING「O」第8号』の書評が掲載されています。

専攻や所属を超えた知的交流の場を創出すべく、活発な勉強会、情報発信を行っている京都アカデメイア(HP:http://www.kyoto-academeia.sakura.ne.jp/about.html)による、書評記事として『大澤真幸THINKING「O」第8号』が詳しく取り上げられています。

「 大澤真幸と宮台真司の久しく待望された対談が、ついに実現した。名実ともに現代日本を代表する論客といってよいこの二人の対談のテーマとして選ばれたのは、「正義」である。もちろん、背景にはマイケル・サンデルのハーバード白熱教室がある。とはいえ、決して単に昨今のブームに便乗しただけではないことは、本書をわずか数頁読んだ段階で明らかになる。サンデルの「政治哲学」が、あの講義においてはほとんど道徳哲学・倫理学と変わらないものになってしまっていて、その今日的なインプリケーションが必ずしも見やすくはないことを鑑みるとき、この対談が、正義の問題をまずは歴史的で社会学的な文脈に置き直して解き明かすことからはじめている点は、特筆すべきである。」

「 ここから論はさらに「ミメーシス」へと向かう。資本主義の「外部」という問題が、ここに集約するのである。宮台氏は現下の閉塞を打ち破る契機をこのミメーシスのうちに見出しているのだが、利己的な動機を超出して感染が生じてしまうという構造が、資本の論理にとって外在的なものだと、大澤氏は指摘する。そして、さらには、ここまで展開されてきた再帰的共同体主義を超えるものだとも。ただ、そのミメーシス自体もすぐれて社会的な現象だとすれば、単に「カリスマ」を待望しているだけではいられない。むしろ、現代社会は感染的な模倣を引き起こす機会にひどく乏しいとさえいえる。そこで提示されるミメーシスのアクチュアルな可能性についての考察の方向性は、ある意味、宮台氏と大澤氏とで対照的である。」

執筆者・上野大樹さんによる書評の全文は、京都アカデミアのこちらのページで読むことができます。
http://www.kyoto-academeia.sakura.ne.jp/review15.html