書評掲載:松浦寿輝著『明治の表象空間』

「群像」2014年9月号に、松浦寿輝著『明治の表象空間』の書評「理性/非理性の共犯関係を越える文業に向けて」が掲載されています。

本書を貫く知的想像力の自由度を実感してもらうために、ひとつだけ例を引こう。一葉の「にごりえ」の「お力」の独白を分析したところで、松浦氏は突然、教育勅語に言及する。教育勅語も一人称(「朕」)の語りだからだ。そしてこの対極的な二つの一人称の語りが張る磁場こそが、明治二十年代の日本の表象空間の核心だ、と論ずる。他の誰が、気が狂いはせぬかと案ずるお力の独白が、教育勅語の一人称と相関していると気づくだろうか!

同誌には、連載「〈世界史〉の哲学」第65回も掲載されています。